【斎藤修議員の質問】

昨年は、コロナで厳しい1年でしたが、11月に香川県内で大きな事故がありました。みなさま、よくご存知のことですが、瀬戸内海の与島沖で、小学生52名を乗せた小型船が沈没したのです。

コロナの影響で予定を変更し、見慣れた瀬戸内海での修学旅行中でした。浅瀬の岩に衝突して船が浸水し、10分後には沈み出しましたが、異変にいち早く気付いた漁師さんが、とっさの判断で仲間を呼び救助に。

急報を受けた消防本部も、緊急車両5台で瀬戸大橋を渡り、港で待機し、運ばれてきた児童らの対応に当たったそうです。

そして、全員が無事に救助され、事故発生から2時間後には保護者の待つ学校に到着しました。

この快挙にはいくつかの奇跡が重なったと報道されました。

まず、ベテランの漁師さんが事故現場の近くにいて、仲間もすぐに駆け付けてくれた。

また、水温が17度を下回ると身体の自由が利かなくなり、溺死する可能性が高い中、11月下旬にしては季節外れの暖かさで、平年よりも気温が8度も高かった。

また、事故が起こった時間が午後4時ごろでまだ明るかった。全員を救出して、船に乗せ終えた頃には太陽が沈んでいました。暗い海で、人影を探す捜索になっていたなら、結果が変わっていたかもしれません。

また、児童たちは10日前に消防訓練を受けており、「緊急の時は消防隊員のような行動力を見習いたい。」と感想を述べていたそうです。

船が沈没するという非常事態の中でも、子どもたちは冷静な行動で救助の順番を譲り合ったり、船の周りに人が浮かんでいないか探したりしていたそうです。

与島の港に着き、船を降りた子どもたちは、救助してくれた漁船に向かって「ありがとうございました。」の大合唱。子どもたちの冷静さと思いやり、これがあったからこそ、全員が助かったのだと思います。

誰か1人でも助からなかったとしたならば、ご家族の悲しみはいかばかりであったことでしょう。そして、子どもたちも深い傷を負い、先生や学校もずっと責任を背負っていかなければなりません。

今回、全員助かったことで、彼らはこれから先もきっと、今回の体験を生かして、何事にもあきらめず、他人を思いやる大人に成長するでしょう、

また、このニュースを聞いて、昭和30年に起きた紫雲丸沈没事故を思い出した方も多いと思います。1955年5月、連絡船が貨物船と衝突して、高松沖で沈没。修学旅行生100名を含む、168名もの尊い命が犠牲となった事故です。65年前のこの事故が瀬戸大橋建設の機運を高めました。

さて、先ほども申しましたが、奇跡的な全員生還にはいくつかのポイントがあったかと思われますが、その中でも普段には身近に存在しないであろう「ライフジャケット」の着用に着目したいと思います。

本市でも、小学生は屋島少年自然の家での集団宿泊学習にて、「海洋体験」を選択した場合は、「ライフジャケット」の着用を体験していることとは存じますが、小学校の新学習指導要領体育の中で「水泳運動」における高学年での内容の中に「安全確保につながる運動」が新設されており、自然環境を想定した正しい行動を伝えていくことも大変重要なことであると考えます。

そこでお伺いします。

本市の学校教育現場において、この事故を記憶し、児童生徒の水難事故を防止する対策の1つとして「ライフジャケット」の重要性等を教育に加える考えをお聞かせください。


【高松市教育委員会・藤本泰雄教育長の回答】

昨年11月、修学旅行中の小学生を乗せた小型船の与島沖での沈没事故は、想定外の事故にも関わらず、落ち着いて行動した児童の対応力に感服するとともに、この事故を教訓として、今後の安全教育をはじめ、あらゆる教育活動の1つ1つを丁寧に、そして確実に実施することの重要性を再認識したところでございます。

「ライフジャケット」につきましては、先の沈没事故の際、全員が着用して無事に救助された例からも、長時間水中で身体を浮かせ、呼吸ができる姿勢を保つことができ、水難事故を防止する対策として大変効果があり、重要なものと認識いたしております。

これまで本市の小学校におきましては、学校行事等での「海洋体験」などの際、利用する施設等の職員などから「ライフジャケット」の着脱の仕方や、水中での対処方法など専門的な安全指導を受講しているところであります。

今後は、学習指導要領に新たに加えられた「水泳学習」における「安全確保につながる運動」において「続けて長く浮くことができること」を体験する際に、「ライフジャケット」も活用して、安全指導の充実に努めるよう、各学校を指導してまいりたいと思います。